エアブラシとは空気を作りだす(コンプレッサー)と、その送られてくる空気で塗料を飛ばす(ハンドピース)を合わせたものを総称してエアブラシといいます。
筆塗りと比べて広い面積を均一に吹き付けられ、圧と量を調節してグラデーション塗装など様々な塗装が可能となります。
またメンテナンスを定期的にする事で長く使う事が出来る為、自分の用途に合った最適なエアブラシを選びましょう。
この記事でエアブラシ塗装に必要不可欠なハンドピースとコンプレッサーの種類と選び方を解説します。
ハンドピースの種類
コンプレッサーから送られた空気と一緒に塗装を吹き付けるハンドピース
主な種類と特徴を解説します。
シングルタイプ

- 特徴: ダイヤルで調整した塗料の量をエアブラシのボタンを押すことで空気と同時に塗料が出されます。
- メリット: 操作がシンプルで、初心者でも扱いやすいです。コストパフォーマンスに優れている。
- デメリット: 塗料の出る量はダイヤルで調整するため、細かい表現の作業では手間がかかる。
ダブルアクション

- 特徴: ボタンを押すとエアー、そのまま引くと塗料が出ます。引く量によって塗料が出る量が変わる。
- メリット: 細かい調整が可能で、グラデーションなどの繊細な表現ができます。
- デメリット: 操作に慣れが必要ですが、慣れれば汎用性が高いです。
ボタンを押すと空気のみが出てボタンを押したまま手前に引くと塗料が出る仕組みになってます。
指先のみで引いた分だけ塗料が出てくるので直感的に操作ができ、現在では一番定番で人気がり種類も豊富なタイプです。
ダブルアクション(トリガータイプ)

- 特徴: 銃のようにトリガーを引いて操作するタイプ、トリガーを少し引くとエアーがさらに深く引くと塗料が出ます。
- メリット:ボタンタイプに比べて指に負担がかからないため、長時間の作業でも指が疲れにくいです。また、操作感覚が直感的で、ダブルアクションと同様にエアーと塗料を個別にコントロールできます。
- デメリット: 一般的なペン型に比べてサイズが大きく、細かい作業や狭い場所の塗装には不向きな場合があります。
カップの種類
塗料を入れるカップの形状も重要なポイントになります。
カップ一体型

- 特徴: カップと本体が一体になっているタイプ。
- メリット: 一体型のため、掃除などメンテナンス簡単。
- デメリット: 大量の塗料が入るタイプは少ないため、向いていません。
カップ分離型

- 特徴: カップと本体が分解できて交換が可能
- メリット: カップを取り外して大容量のカップに交換ができるため、塗料の補充の時間を省くことができる、広範囲の塗装の時間短縮や途中で塗料が切れるリスクが減る。
- デメリット: カップ一体型に比べて金額が少し高額。
ノズル口径サイズ
ハンドピースには内部にニードルという針が内蔵されておりその先端の塗料ノズルと針の隙間から塗料が排出されます。
ノズル口径とは、ハンドピースの塗料が噴射される先端の穴の直径のことです。このサイズによって、一度に噴射される塗料の量や幅が決まります。
ハンドピースは各メーカーから様々な口径サイズを発売しており、一番小さくて0.18㎜大きいサイズで0.7㎜と様々存在します。
口径サイズによる違い:
- 0.2mm以下: 極細の線や細かい模様、迷彩など、精密な塗装に特化しています。塗料が薄く、少量しか出ないため、重ね塗りで繊細なグラデーションを表現するのに適しています。
- 0.3mm: 最も汎用性が高い標準的なサイズです。細かな線から広い面まで対応でき、1本目に選ぶならこのサイズがおすすめです。
- 0.5mm: 広い面のベタ塗りや、サーフェイサー(下地塗料)を吹くのに適しています。一度に大量の塗料を噴射できるため、作業時間を短縮できます。
コンプレッサーの種類
コンプレッサーはハンドピースに空気を送り込むエアブラシの心臓にあたる部分です。
最 高 圧 力(最大空気圧力)
定 格 圧 力(連続空気圧力)
吐出空気量(空気吐出量)
作 動 音(作動音量)
上記の4つの数値の役割を知ることでコンプレッサー選びの基準になるので解説していきます。

コンプレッサーの製品情報にはこのような表記があります。
上記の情報をもとに解説します。
最高圧力(連続空気圧力) 定格圧力(連続空気圧力)

最大圧力とはコンプレッサーから空気を出していない状態で、どこまで圧力を上げられるかを示します。
コンプレッサーが空気を溜めることができる上限の圧力になります。
定格圧力とはハンドピースのボタンを押したままの状態で空気を出し続けたときに空気の圧力をどのくらい維持できるかの数値になります。
プラモデル塗装での必要定格圧力は0.05MPa~0.1MPaあれば通常の塗装は可能です。
大きなパーツの塗装などで口径の大きいハンドピースを使う場合は0.1MPa~0.3MPa程度あると快適な作業が行えます。
細吹き、グラデーション、迷彩塗装:細い線を描いたり、色の境界をぼかしたりと低い圧力にすることで、塗料の飛散を抑え、より繊細なコントロールが可能になります。
小さなパーツの塗装: 1/144の頭部などの細かなパーツなど、高圧で吹き付けると、塗料が周囲に飛び散りすぎたり、パーツが吹き飛ばされたりすることがあります。
隠蔽力の高い塗料の使用: 隠蔽力が高い塗料(隠ぺい力が高いほど、下の色が透けにくい塗料)は、薄く塗るだけでも効果があるため、低い圧力で塗膜を薄く重ねていくのが効果的な場合があります。
広い面積の塗装: 広い面積を均一に、短時間で塗装したい場合。高い圧力で塗料を勢いよく吹き付けることで、ムラになりにくく、効率的に作業できます。
粘度の高い塗料の使用: ウレタンクリアーやサーフェイサーなど、粘度が高い塗料を使う場合。低い圧力だと詰まりやすいため、高い圧力でしっかりと吹き付ける必要があります。
光沢のある仕上がり: 塗料の粒をより細かく霧状にする(微粒化)ことで、平滑で滑らかな塗面を作り、美しい光沢を得ることができます。
塗料の希釈を抑えたい場合: 塗料をあまり薄めずに吹きたい場合にも、高い圧力が必要です。
大きい圧力のコンプレッサーはレギュレーター(圧力調整器)で圧力を弱めることができるので、将来的に高圧力が必要になるかも!と思われる方は、高圧力のコンプレッサーを使えば柔軟に塗装作業が可能となります。

このように、エアブラシの圧力は、単に「高い」「低い」だけでなく、塗装する目的や使用する塗料に合わせて柔軟に調整することが、美しい仕上がりの鍵となります。
吐出空気量(空気吐出量)
吐出空気量(L/min)は、「1分間にコンプレッサーからどれだけの空気を吐き出せるか」を示しており、塗装の安定性や効率に直結します。
吐出空気量の基準
エアブラシの吐出空気量の目安は、使用するハンドピースのノズルの口径によって変わります。
- ノズル口径 0.3mm以下:
- 目安: 5L/min 以上
- 特徴: プラモデルの細かい部分や、一般的な塗装、グラデーションなど、オールマイティな作業に適した口径です。吐出空気量も比較的少なくて済むため、小型で安価なコンプレッサーでも対応しやすいです。
- ノズル口径 0.5mm:
- 目安: 10L/min 以上
- 特徴: 広い面積の塗装や、サフェーサー、メタリック塗料、ウレタンクリアーなど、粘度の高い塗料を吹き付ける場合に適しています。ノズル口径が大きいため、より多くの空気を必要とします。吐出空気量が少ないコンプレッサーだと、圧力が安定せず、塗料が詰まりやすくなることがあります。
作 動 音(作動音量)
エアブラシ用コンプレッサーの作動音は、製品によって大きく異なります。一般的に、騒音レベルはデシベル(dB)という単位で表示され、その数値が低いほど静かです。
騒音レベルの目安
- 50dB以下: かなり静かな部類です。図書館や静かなオフィスに匹敵するレベルなので、夜間や集合住宅での使用にも適しています。
- 60dB程度: 一般家庭やオフィスでの使用であれば問題ないレベルです。日常的な会話よりも少し大きな音です。
- 70dB以上: かなり音が大きくなります。使用する環境によっては騒音と感じられる可能性があります。
騒音を抑えるための対策
コンプレッサーの作動音は、機種選びだけでなく、使い方でも軽減できます。
- 防音マットや防振材を敷く: 振動が床や壁に伝わることで音が響くことがあるため、コンプレッサーの下にマットを敷くと効果的です。
- 防音ボックスに入れる: コンプレッサーを箱やケースで覆うことで、音の漏れを防ぐことができます。ただし、熱がこもりやすくなるため、換気には注意が必要です。
購入を検討する際は、メーカーの公称値を確認するだけでなく、YouTubeなどの動画で実際の作動音を聞き比べてみるのがおすすめです。
迷ったらこれ!おすすめの選び方
これまでの解説を参考にしながらハンドピースとコンプレッサーのおすすめの選び方を解説していきます。
【初心者向け】
- 主要メーカーが販売している「コンプレッサー+エアブラシ」のセットがおすすめです。
- 機器の相性を気にせずすぐに始められ、メーカーのアフターサービスも安心です。
【中級者以上向け】
- 用途が決まっている方は、エアブラシとコンプレッサーを別々に選ぶのが良いでしょう。
- 自分の用途に合ったノズル口径やアクションタイプ、作業環境に合わせたコンプレッサーを自由に組み合わせることができます。
この記事を参考に、あなたにぴったりのエアブラシを見つけて、ホビーライフをさらに楽しみましょう!